いいものだけが売れるわけではない

松浦弥太郎さん、元暮らしの手帖編集長でらっしゃいますが、以前このブログで一度ご紹介させて頂きました。そこにあった「ある言葉」は私の心棒になっています

そもそも幸せというのは、独り占めするものではないのです・・と常におっしゃるから素敵です

さて今回「いいものだけが売れるわけではない」ご紹介いたします

☆世の中、残念ながら、いいものだけが売れるというわけではありません。僕はよく、人がたくさんいる場所に出かけていきます。それは本当に勉強になります。自分が作った本でもいいし、自分がかかわった仕事でもいいのですが、そういうものを携えて、たとえば渋谷のスクランブル交差点に立ちます
そこにはいろんな人がいますが、この人たちのうちいったい何人が自分のつくったものをハッと思って買ってくれるんだろうとか、どういうことをここで大声あげて叫んだら振り向いてくれるんだろう、とよく考えます
自分を中心にして半径三百メートルの人たちに喜んでもらえるものを作るのは簡単なのですが、やっぱり世界中のみんなが喜んでくれるものを作りたい―そういうことを考えると、人のたくさんいる場所に立って、自分の肌でそれを感じるしかないのだなと思います

つまり、自分のサークルを広げていかなくてはならないということなのです。サークルが広がったかどうかは、とてもわかりやすいものです。たとえば「暮らしの手帖」いう雑誌は、すでに広がっているわけですが、さらに広がっていくとそれだけ意見やお叱りが多くなるのです。今までは半径三百メートルだったからほめられっぱなしだったけれど、これだけ広い場所に行くと、それだけこなさなくてはならないことが出てきます。でもそこで、自分の信念を曲げてしまったら、さらに批判されるのです

今まで以上にもっと自分を出して行かないと、自分を見せていかないと、だめなのです。それはむつかしいことですが、とても大事なことです

批判する人は、僕が何を考えているのか、何をしたいのか、わからないから批判するのだろうと思います。でもそれを伝えようと思ったら、さらにもう一枚、僕は服を脱がなければならないのです。素顔の自分を、自分の「変」なところを見せないといけない。これはつらいことです。本当につらいことですけれど。続けるしかありません。
なぜそれができるかというと、先ほどの北海道の中学生の手紙のようなものがあるからです

その「ある中学生からの手紙」
十の嫌なことがあっても、一のいいことがあるのが人生です

僕(松浦弥太郎さん)は、先日、北海道に住む中学二年生の人から手紙をもらいました
その手紙は「暮らしの手帖」を読みました、と始まります。その人は友達関係でつまづいて、学校に行けなくなってしまったそうです。不登校になってしまったんですね。
でも、私は悪くないって思い続けていたそうです。そんなときお母さんが「ここに、なんかいいこと書いてあるわよ」と渡してくれたのが「暮らしの手帖」でした。それを読んで「私が悪かった、私が悪かったから、みんなこうなっちゃったんだ」と気づいた。それでその人は自分を直した、とありました。それで学校行けるようになった、と
友達が、「変わったね」って言ってくれた、と結んでありました

松浦弥太郎編集長と言う宛名に、そんな素敵な手紙をくれたのです
不思議なもので、実際には「もうだめだ」と思う時もあるのですが、そう思うと、必ずひとつは、自分を励ましてくれることがやってきます
でもおおむね向かい風。それは、おとなしくしているわけではないからです。今までに前例がないことをしようとすると、多くの人が否定します。だから、新しいことをやってる以上、いつも否定されます。でも、きっと、もうだめだというときには、そういう自分を励ましてくれる何かがやってくる、それでがんばろうかなと思えます

すべて自分が一生懸命やってきて、ふとたまたま訪れたきっかけをつかんで、多くの人に助けてもらいながら、自然に導かれた結果です。人生は予測のつかない化学反応なのです

以上「センス入門」松浦弥太郎 2013初版第1刷・2024・5・30初版第24刷発行