爽やかな10月とはいえ、遠く山形酒田の地に、全国からかくもたくさんの歯科医療従事者が集合する。酒田市のタクシーはぜーんぶ庄内空港と東北公益大学の往復に取られてしまうのではないか?と思うくらいの大人数の大移動です。空港で予約した医院の名前をかざす運転手さんの風景は、やもすれば昔の温泉地?でしょうか。
オーラルフィジシアン・チームミーティングもこれで何年になるでしょう。朝4時の自宅近くの羽田行きバスに乗り、朝六時過ぎのヒコーキに乗っていざ酒田へ。9時の開始には全国各地からドクター・歯科衛生士・コデンタルがこんなにたくさん集まるなんて・・!
昨年10月・NHKプロフェッショナルに満を持して登場された、歯科医師 熊谷崇先生んのコンセプトに共感し、歯科医療の改革を目指す我々の集合です。もう10年以上のお付き合いになる先生方、最近ご一緒するようになった先生方。どの方もここに来る労をこぼす人などいません。それよりここに来なければ得られない情報以上に、おなじものを志す仲間との「変わらぬ強い絆」を又結びに来るのかもしれません。
来るたび、会うたびに強くなるその絆は、いつも患者さんへの”まなざし”。緊急になってから、困ってから、何かあってからの従来の歯科受診でなく、患者さんのお口の健康、症状なくとも進んでいる歯周病含め、削ることはすぐ必要なくとも初期虫歯などないか?手を下す前に、守れることがたくさんあることをお伝えして、患者さんご本人に気づいていただき、ご自身の健康は自分で守れることを理解頂けるようにし、患者さんと共に
問題解決に向かうのが今の歯科医療です。
今回アメリカの先生から、あらためて患者さんご本人が参加して初めて、歯科医療が成り立つという基本的なことが再確認出来、そのために医療者に必要なスキル以外の、大切な
要素や知識があらためてわかりました。病気を見ずして人を診よ・・と言われて久しいですが、私達歯科医療従事者の人間も問われていることを痛感しました。
名だたる研究者や臨床医に混じって、今回初めて歯科大学生が発表されました。聞けば
一般職を経験された後、思うところあって人生を考えてらっしゃる時に、熊谷崇先生の
歯科医療のイノベーションを知り、歯科大学に編入された方でした。発表内容にも心打つものがありましたが、この世界しか知らない私達にとって、ビジネス社会を経験された後、歯科医師を目指してらっしゃるその孤高な、崇高な思いを伺って感動しました。発表後称える表彰があるのですが、その場も遠慮されたようで、とても謙虚でわきまえた方だなぁと思いました。このようなことは以前でしたら、大学の医局で先輩方が教えたものですが、医局というものが随分と緩やかな雰囲気?になった昨今、このような”礼儀”や”たしなみ”というものを教える人が少なくなったのはとても残念なことです。このことは、インプラントの第一人者・小宮山先生がご発表の中で、強くおっしゃったことに等しく、医療者としての「立ち位置」と言えることかと思います。
すべての発表者から得るものは大きいものがありましたが、とりわけ小宮山先生が、歯科医療従事者としての「たしなみ」をきちんとおっしゃったことは、何より気持ちの良いものでした。ドクターである前に人としてあるべき姿。スタンダードのステキさを存分に伝えて下さって、今だからこそとても新鮮でした。
どんなに新しい情報や新しい器械揃えても、基本がきちんとできていないことには、いかんともしがたい。それは、たった一枚の情報提供の用紙を書くことから、医科の先生にお伺い立てる時に、同程度の知識を持ち合わせているか・・にまで及ぶものでした。刺激たっぷりの2日間でしたが、あとでレポート読めばわかるでなく、あの場で同じ志の仲間と時間と感動を共有することが、患者さんに正確に意義あるものとして伝わる原動力と思いながら帰ってきました。疲れましたがこの心地よい疲労感は、必ずや患者さんに伝わる「大きな力」になると信じています。スタッフの感想文が何よりそれを物語っています。皆様に還元できるように、医院全体で前に進みます。 院長 奥富史郎