気象の変化が大きいと、1~2日後に歯周炎悪化

☆生気象学により、気圧や気温が生体に及ぼす影響が明らかに

気象が生体に影響を及ぼすことは、古くから言われていたことですが、実は1950年代より「生気象学」として体系化され、様々な疾病においてあきらかになってきています。
口腔の分野でこの度岡山大学の研究グループが、慢性歯周炎の急性期症状の発生と気象の変化に関連性があることを突き止めました。

人間を取り巻く環境が生体に影響及ぼすことは、ヒポクラテスの時代から言われていましたが、「生気象学」(Biometeorology)という学問になったのは1950年、日本では1962年に「日本生気象学会」が発足しており、特に気管支喘息・頭痛・関節痛・心筋梗塞・脳梗塞・うつ病・リウマチ・顎関節症などと気圧や気温との関連性が徐々に明らかになっています。

歯科領域においても、「飛行機に乗ると歯が痛くなる」ことはよく言われており、気象の変化が急性の歯周病を引き起こすのではと考えられていました。

☆気圧・気温・風速の3つが慢性歯周炎の急性増悪に関連

そこで岡山大学予防歯科学で、2011年11月から2013年11月までの2年間、延べ2万人の慢性歯周炎患者さんに、急性増悪した全員を対象に調査しました。このうち、急性増悪した原因を口の中や体の状態になかった153人に、気象状況との関連を時系列分析した。気象データは気象庁が発表した岡山地方のものを利用して153人の症状が出始めた日の気温・気圧・風速・湿度・降水量・日照時間を元にした研究です。

その結果、「気圧」「気温」「風速」の3つが慢性歯周炎の急性増悪に関わっており、「気圧の毎時減少変化の最大値が大きい日の2日後」
「気温の毎時増加変化の最大値が大きい日の翌日」に慢性歯周病の症状悪化が見られ

「最大風速が大きい日の3日後」では症状悪化は少ないという結果も出ました。

☆メカニズムは不明だが、気象がからだに与える影響を推察

まず気圧と気温の変化は交感神経を刺激して、抹消血管の血流障害をもたらし、傷みや晴れを引き起こすと考えられます。
又気圧の変化はホルモン環境に影響を与え、特にアドレナリンは歯周炎関連細菌の増殖に関係することがわかっています。
さらに気温は炎症に関わるサイトカイン、特にIL-6の発現に関与し、その分泌が促され痛みや晴れなどを引き起こします。

一方で、培養実験では、病原菌が炎症性細胞を誘引してサイトカイン等を誘導して炎症反応起きるまで2~72時間を有すという時間が、気象の変化から慢性歯周炎の症状悪化までの時間とほぼ同程度であり、培養実験と同様の状態が起こっていることが見てとれます。

いずれにしても、気象の変化が宿主や口腔内の病原細菌に影響していることは否定できず、歯周病が40歳以上の国民の8割が罹患し、歯の喪失の約4割を占める今、慢性歯周炎の急性増悪を予測することは、歯の保存の為にも重要と、この研究をした岡山大学予防歯科教室では報告しています。

この原稿を起こしている昨日今日、大きな台風の後発生したそんなに大きいとは言わなかった台風が、連続して日本列島に接近し大雨と強風をもたらしておりました。すると
当院でも、岡大の報告のように朝から歯が腫れた!噛めない!痛い!といった急性症状の患者さんがあり、特に糖尿病治療中の方、骨粗鬆症世代・血圧高めの方など、該当患者さんの歯周病のデーターを見ながら、炎症と気象が及ぼす影響をつくづく実感しました。このような歯周炎の急性炎症のメカニズムがより詳しくタイトにわかって来れば、歯の保存に生きると思われます                                    (ishikyo Mate No296より、抜粋して引用)