2022年に書かせて頂いた「翼」ですが、真夏のような気温の日があったあと、昨日今日のように肌寒く15~6度なんていう曇り空の日に、やはり、この武満徹の詞が石川セリの声とともに耳に届きました・・再掲載です
久しぶり、古~いバイオリン等のCDを引っ張り出しているうち、ふとこれも随分前の「石川セリ」を聴きたくなって、珍しく何度も、繰り返し
大好きな「翼」(武満徹・詞、恩地日出夫 演劇「ウイング」)を聴きたいと思ったのですが、その前の「島へ」に心揺さぶられそのあとに「翼」を聴いていると、ベランダの、葉の落ちた紫陽花の細い枝を揺らしていました。よく見ると、その葉の落ちた柏葉紫陽花の枝に、小さなプツンとした膨らみもあり、冬を越して又蕾をつけてくれるのだろうなぁとかすかな楽しみを持ちました・・。(2022年1月掲載時、今は花どきです)
島へ (井澤満・詞 1983年TVドラマ「島へ」(富岡多恵子・原作))
見知らぬ人よ あなたはどこにいるのですか
めぐりあいを信じていますか
ガラスの廻転扉をひとつまわったら
あなたの胸にぶつかるでしょうか
都会の海に漂い
島をさがしつづけています
さすらうひとよ あなたは歩きつづけますか
繋ぐ掌と掌もとめていますか
心の水平線さえいつか見つけたら
あなたとわたし出逢えるでしょうか
結ばれる睡る緑の
島をさがしつづけています
翼 (武満徹・詞 1992年 恩地日出夫 演劇「ウイング」)
風よ 雲よ 陽光よ
夢をはこぶ翼
遥かなる空に描く
「希望」と言う字を
ひとは夢み 旅して
いつか空を飛ぶ
風よ 雲よ 陽光よ
夢をはこぶ翼
遥かなる空に描く
「自由」という字を
※1993年~1995録音の大事に聴いていたCDですが、歌詞カードの最後のページを読んでいませんでした。この度何気に見ましたら、武満徹さんの編集後記のような言葉(以下)があり、うっかりしていたことを恥じながら読みました。
以前偶々、石川セリの昔のアルバムを聴いて、自分が少しづつ、機にふれて書き溜めてきた小さな歌を、彼女に歌ってもらって、なにか楽しいアルバムを作ってみたいな、と空想したことがあった。中略・・・。思いがけなくも、私の夢は実現することになった。中略・・・。
きっと多くの方が、なぜクラシックの、しかもこむずかしい現代音楽を書いている作曲家がこんなアルバムをつくったりするのか、不思議に思われただろう。「翼」といううたにも書いたように、私にとってこうした営為は、「自由」への査証を得るためのもので、精神を固く閉ざされたものにせず、いつも柔軟で開かれたものにしておきたいという希いに他ならない。 武満徹