来年2017年8月閉館が決まった、赤坂のホテル・オークラのこだわりの数々に改めて
賞賛の声が上がっています。アメリカ大使館そばのオークラは、車以外ではちょこっと
不便ということもあり、ファン以外には馴染みがないかもしれません。創業者の
大倉喜七郎という方は、聞くところによると当時の芸能のパトロンで、こだわりにこだわ
った方。かといってギンギラギンでなく(笑)人目のつかないところに美をしのばせる達人
だそうです。オークラのロビーは、今では考えられないほどのゆとり感で、気が付けば我
が家に居るかと勘違いするほどの「ほっといてくださる感」。
何と言ったらいいのでしょうか。ゆとりを感じさせてくださいます。また婦人用のトイレ
が何とものすばらしさ。大きな一部屋と思うほどのスペース。ゆったり感につい長居を
しそうです。こんなところに大蔵喜七郎さんのこだわりが見て取れます。なんといっても
圧巻はロビー。そこここの木格子であったり、昔の職人芸が光る細工物だったりしますが
そこに威風堂々でなく私たちと対話するごとくの生け花、つい足を止めてしまいます。
一時は遠く葉山よりご高齢の方がお花を活けにいらしていた事がありました。「たおや
か」な白髪のご婦人は、大きな梅の枝も活けられ、細いお体からは想像できぬ堂々たる
梅の木の再現のようないけばなに圧倒されたことを思い出します。
「一座混入」「花所望」といわれるそのお花を生けるスタイルは、お花とその場に
居会わせるお客様・活け手の三位一体で作り上げるものというものです。広ーいロビーに
花材を広げ作り上げていく生け花の世界を、お客様も一緒に楽しむ。こんな贅沢な時間は
ありません。その空気感、一本の花材が、他の花や枝と出会って作り上げられる花材同士
の楽しい会話が聞こえるようです。気がつけば悠久の世界。日本人でなくとも息止めて見
入ってしまいます。
付け加えさせていただけるならば、オーキッドルームの「ダブルコンソメ」スープ。
丁寧な職人仕事の極みです。何も言わずに、口に運んだスプーンからのどに流れ落ちてい
くそのエキスは丁寧な丁寧な仕事から生み出された、お肉と野菜の滋味です。すべてに感
謝したくなる一皿です。豊かな時間をいただきに閉館前にぜひ足を運びたいと思います。
おすすめの逸品・ダブルコンソメを、ぜひ。emi