「母と一緒に食卓囲みたくて」とヒラヒラした美味しそうな、とんかつの写真添えられた記事が目にとまりました。
そして直ぐ、かつての、ある患者さんを思い出しました。
そのおばあちゃん(そう言うに相ふさわしいご隠居さん)は古いお宅に四世代で住んでおられ、アップにまとめた髪型がなんともすてきな高齢者ですが、いつもお声がけすると、気さくに日々の暮らしを話して下さいました。
お嫁さんが同伴下さり、きちんと定期メンテナンスに通われていました。
昔ながらの補綴物(被せもの)が沢山おありですが、ホームケアをよくなさり、定期メンテナンスに欠かさずみえるので、再治療はせずトラブルなくお過ごしでした。
ある日「ほんとに何でも美味しく食べられるのよねぇ。
ゲートボール仲間に会うと、皆歯が悪くてあれがダメこれがダメって。うちはね四世代だけど、私だけ違うおかずって事ないの。
とんかつの日もね、薄い肉をとんかつに揚げてくれるから、皆と一緒に同じ時間に同じもの食べられますよ。
先生にいつも丁寧に口の中診てもらって、看護師さん(歯科衛生士をいつもこう仰った)にキレイにしてもらってるからね」と。
記事を読んで、同居の四世代が同じ食事を囲める幸せなご様子を90過ぎの患者さんから伺った事を思い出したのでした。
その時こうもおっしゃいました。
「年寄りだからって皆と違うおかずで、食べるの遅いからって別の時間に一人で食べたって美味しくないものね、やっぱり一緒に同じもの食べたいわよ。ひと手間、面倒かけちゃうけどね」。
記事を目にして、90過ぎ迄通われた元気なおばあちゃんの本音を思い出しました。そして、そう言えば高齢になって一番の恐怖は「孤独です」と言う言葉も思い出しました。
長い事、定期メンテナンスにお元気に通われた、にこやかな高齢の患者さんを思い出せてくれた記事でした。ありがとうございます。