折々のことばより  石毛直道

 乗り物の速度の速さに反比例して、風景や
 人びとの営みの発見は少なくなる      石毛直道

効率第一、目標に向かいまっしぐらと言う仕事の仕方は性に合わないと、文化人類学者は言う。列車に乗れば「定められた軌道のそばの風景」しか目に入らない。自転車だと、寄り道、回り道をするうち、思いがけない場面、面白い問題に遭遇する。効率化は視野を狭める。未知の軌道に飛び込まなくなって、小粒の研究しかできなくなると。
随筆集「道草を食いながら」から。

この記事を目にしたその晩、テレビで夜遅く「呑み鉄選日本一周!」を偶々見た。指宿枕崎線、近江鉄道信楽高原鉄道、天竜浜名湖鉄道、関東鉄道、宗谷本線等など。行く先々で地元のお酒にのどならし、地元でしか食べられないものに舌鼓をうち、電車内で分け隔てなく地元の方と話し・・。
又地形や鉄道の知識にも精通する案内人の、俳優・六角精児のなんともほのぼの自然体が魅力的な番組にでくわし、随分と贅沢だなぁ~と思ったことだった。
番組だからであってこうは行かなくとも、「道草を食いながら」は素直にそうだなぁ~と思った秋の日でした。