加齢で全身の筋肉が弱る「サルコペニア」の症状を、脳で働く特定のたんぱく質を増やして改善する動物実験に、国立長寿医療センターなどのグループが成功した。筋肉の老化に脳の働きが関わることを示した。
グループは、老化に伴って増える病気と、細胞内でエネルギーを作る上で不可欠な物質の研究を続けてきた。こうした物質を細胞の外から中に取り込むたんぱく質「SLc12a8」を調べると、加齢に伴って、脳の特定の場所で働きが低下することを見つけた。
若いマウスの脳の特定の領域で、このたんぱく質の働きを止めると、全身のエネルギー消費量が減った。さらに筋肉の量や筋力、筋肉でできるたんぱく質の量、走る距離が低下し、年とった老化マウスと同じような状態になることがわかった。
逆に老化マウスの脳でこのたんぱく質の働きを上げてやると、筋肉量や筋力も上がり、走る距離も伸び、サルコペニアの症状を改善することができた。
サルコペニア、更に心身の働きも衰えて要介護前段階となる「フレイル」の詳しい原因はわかっていない。グループの米ワシントン大の今井真一郎教授は「これまでのサルコペニアは筋肉の問題として考えられてきたが、中枢神経が関わることがわかった。新たな治療法開発につながる可能性がある」と話している。