「デザインしない」にたどりついた

コムデギャルソンのデザイナー、川久保玲さんは常に新しさに挑んでらっしゃいます。それが2019年春夏の作品では「デザインしなかった」というのです。「内面的なデザイン」に向かった川久保玲さんが、こんなことを言ってらしたという記事がありました。

「抽象的なイメージを形にして、服でないような形を作ることはある程度やりがいがあった。しかしもう新しさを感じなくなった。常に新しく、強く、人の心に刺激を与えて前に進むことを目指してきたけれど、その方向では次の新しさを見つけることが出来なかった。そしてデザインしないことがデザインではないかと気づいた。心の中を探って、出てきた中身を素直にシンプルな形で出すしかないと」

色んな形を作ったり装飾をつけたりしない服を、素肌に直接着る。そんな単純なことが、内面的なファッションではないかと思って今回は作品にしたということです。

ある気持ちを持って、じかに入り込まないと本物は作れない。それが着た時に何かしら感覚に影響します。そういうことを考えないで過ごせば安価なだけの服や毎日同じ服でも構わないのでしょうが、何か考えて生きていれば本物の服が必要になるのだと思いますと。

最近のファッション界には、新しいデザインよりもショーの演出や売り方で新鮮に見せる傾向があるが・・との問いに、「ファッションはもう少し。まず作ることそれだけに力を注がなければならないと思います」と答えています。

今回のショーでは、柄物のボディスーツを着せた上に、モノトーンの服を着せ、心地よい生地で、きれいに仕立てた服にあえてハサミで切れ目を入れて壊してしまう。それだけがデザインだったそうです。

ハサミを入れた意味を問われ、ストレートに切っただけに見えるけれど、そう見せるためにはかなりの技術が必要だと。探して、探してようやくたどりついた線なのです・・と。

常にファッションの先端にいらした、今の川久保玲さんらしい言葉をご紹介しました。