合理的で大胆、かつユニークなレシピの小林カツ代さんが亡くなって今年は三回忌だそうです。クモ膜下出血に倒れ懸命なリハビリ・闘病生活経て旅立ったカツ代さん。麹町女声合唱団のステキな姿も思い出されます。
私も仕事を始めてからは、思うようにお料理に時間とれない時、本屋で手にしたカツ代さんのレシピ本にどれほど助けられたことか・・。えっそんなんでいいの!?が率直な感想でした。がんもどきの煮物など、長時間つきっきりは必要ないわ。前日美味しいだし汁作って、含ませておけばサッと煮ただけで美味しいジュワーと味の沁みた煮物になる。どれほど助けられたことでしょう。世の中女性も働く時代になったころ、カツ代さんの「手は抜いても心は抜かない」はヒットでした。あの岸朝子さんが広く世に知らしめたのでした。
「料理は愛情」って言うじゃない。あれは嘘。時間とお金に余裕がある専業主婦ならまだしも、時間に追われ働く女性には、この言葉は極めて残酷。愛情さえあれば美味しいものを作れるなんて言うのは、満足な料理を家族に作れなかった日の情けなさ、みじめさを知らない人の意見。だからはっきり言いますよ。料理は「技術」なんです。
この言葉に料理研究家の山本益博氏もうなったそうです。
「イチローが気持ちだけでは打てないのと同じように、プロの技術は、技術が気持ち以上でなければ本物でない」と。
人気者になったカツ代さんは、本人が日々の食事の支度をするのがそれこそ苦になった日、堂々とスーパーの焼き鳥買ってきて、温かいご飯の上にのせて「焼きとり丼」を提案したとか。でもお味噌汁だけはお出汁とってお野菜たっぷりの具だくさんにしてねと。
涙が出るほど忙しい日には簡単なサラダさえ作る気力もなえることもあると切実に訴える母親には、「いいじゃない。そんな日は、市販の野菜ジュース飲ませれば。毎日じゃないんだから」と豪快に笑って見せ励まされた読者・視聴者も多いと聞きます。私もそうでした・・。
数時間かけて仕込むシチューも、一人で握れるおむすびも、美味しく作ろうという「気の配分」は全く同じというゆるぎない信念。
晩年、短時間ででき上るおかずのことを手抜き料理などと言ってのける人は、料理の本質を全く理解していないと語っていたそうです。
「どんな忙しい時でも、お味噌汁の出汁だけは取りなさい」出汁と言っても手間かける必要はないのです。豚肉・貝類などそのものからおだしも出るし、やり様です。小林カツ代さんにはお料理の知恵をたくさん教えて頂き、忙しくとも何とか格好つけられるのも、そのお知恵のおかげです。
小林カツ代さんは、働く者の味方・と言うより理解者でした。