今年の夏は本当に暑かったですね。病院にいる両親を訪ねる際、地下鉄降りて地上にあが
ってちょっと歩くだけでも、しっかり腕など真っ黒に日焼けしました。皆様はいかがでし
ょうか? その暑い中とびっきりの本に出会いました。ちょうど93歳の父をみている
私には、目からうろこ! すばらしい本なのでダイジェストでお伝えします。
フランス人の体育学者イブ・ジネストとロゼット・マスコッティが開発し、日本の認知症ケ
アに於いて近年急速に注目されている技法です。いささか眉唾と感じる向きもありましょ
うが、なにしろ、手におえない暴力的な人が穏やかになり、拒んだ食事や入浴を受け入れ
るようになり、寝たきりだった人が立ち上がって歩き出す、というのですから本を読んで
技法の細部を知れば納得できるでしょう。
「見つめること」「話しかけること」「触れること」「立つこと」を基本として150以
上の具体的な方法論があるようです。また日本の介護現場での実践を否定するものでもな
く「人間とは何か?」という哲学のもと、いま目の前にいる人と、いかに関係するか。こ
の「現実性」と「固有性」への配慮、すなわち知覚・感情・言語による包括的コミュニケー
ションに基づいたケアの技法です。
病院はどなたもご存知の”病気を治す場所”です。しかし患者さんが脆弱な高齢者である場
合、疾患を治しても、その方の健康を取り戻すことは出来ない事を、多くの方が実感して
います。例えば肺炎で10日間入院の間に歩けなくなったり、食べられなくなったり、認
知症状が出たり、治療の意味がわからず自分で点滴を抜いてしまう方とか・・。
このような状況が普通のことになりつつあります。要するに入院の直接の原因となった
疾患は治っても、自宅での生活に戻ることができなくなる場合が少なくないそうです。
そもそも今までの医学は、治療の意味が理解でき検査や治療に協力してもらえる人を
対象とし、高齢で認知機能が低下した方々にどのようにすればいいかわからなかったので
す。Humanitude(人間らしくある状況)とは、様々な機能が低下して他者に
依存しなければならない状況になったとしても、最後の日まで尊厳をもって暮らし、その
生涯を通じて”人間らしい”存在であり続ける事を支えるために、ケアを行う人がケアの
対象者に「あなたのことを、私は大切に思っています」というメッセージを常に発信する
つまりその人の”人間らしさ”を尊重し続ける状況こそが「ユマニチュード」の状態です。
人は他者から人として遇されなければ「人たる特性」を持つことができません。あなたが
私を人として尊重し、人として話しかけてくれることによって、私は人間となるのです。
私がここにいるのは、あなたがここにいてくれるからです。逆に、あなたがここにいるの
も、私がここにいるからです。何が中心にあるべきか?誰かのケアをするとき、その中心
にあるのは「その人」ではありません。ましてや、その人の「病気」ではありません。
中心にあるのは、私とその人との「絆」です。「人と人との関係性」に着目したケアの
技法・ユマニチュードをご紹介しました。