介護の現場から③

初めて父のところに男性の看護士さんが見えました。名札がドクターも看護士さんもSTさん・・もみな同じ色なので、よく見ないと区別がつきません。ドクターと思ったら、看護士さん。男性みてドクターと思う私の先入観でした。その方、挨拶されたものの、マスクにプラスチックのガードに眼鏡ですから、声が聞こえません。父のそばで何かおっしゃっているので、「すみませんが父94でこちら側耳遠いのです」と申しあげてもガード付きのマスクを外さないので、「マスクを取ってお話し頂けませんでしょうか?」と申しました。すると「お口のケアにきました」とのこと。何にも持っておらず、「?」と聞きますと、この4月に看護士になったばかりとのこと。どうなさるのか見ていても父の入れ歯外すことも難しそうなので、「私がやりましょう」と申し出て、「食後の手入れするので入れ歯を外しましょう・・」と父に言ってペーパータオㇽを口元に持っていき自分で外してもらい、キャッチしました。新人看護師さん「うわッ!」と。唾液含め食査がつき糸引き納豆みたいな入れ歯みて、びっくりしたみたいでした。「未だ駆け出しで授業でも口腔ケアの時間短く何にも知りません」・・と。偉そうにするわけも行かず、私がやることも正解でないかもしれませんが、汚れを取って患者さんのお口の中がきれいになって、お食事が美味しく感じられれば良いことなので、やってみますから見ていて下さいと言って、いつも父にしている流れを見て頂きました(ドキドキ・・)

その間、94歳でも自負もありますので沢山言葉かけをし、いくら娘と言っても、失礼にならぬような気づかいをしていつものように淡々と進めていきました。お口の清掃している間に、ちょっとの時間でも、入れ歯を清潔なやわらかいブラシあてて、洗浄剤につけます。その間ああだこうだ話乍ら、やわらかいスポンジブラシやはねブラシなど使ってお口の粘膜もそっとなでたりします。ベロもオエッとならない範囲で当てます。強引に舌ブラシあてるとかえって傷ついて嫌がります。配食されるお気遣いの野菜のおかずもなかなか味付けが合わないのか?積極的にとりませんので、口の掃除にはなりません。日ごろいろんなものを食べることが、お口の運動および掃除になっているわけです。

そんなこんなで、清潔になった入れ歯を、先日の菊谷先生の講座で学んだように、わざと
無造作にペーパータオルに載せて「どうぞ」と父に差し出すと、「ありがとう」と必ず上の入れ歯から口に納め下の入れ歯を入れて上下の噛み合わせを確認します。大したものです。「アーッさっぱりした」という父の言葉がご褒美です。実際看護士さんの現場で、このような手間かけていられないでしょうが、実際何分もかかりません。口の中を清潔に整えてあげることは、結局肺炎予防になり、摂食機能も落とさずに済むことが多いので、お口のケアは優先してやって頂くと、患者さんにも医療者側にもいいこと尽しなのです。

という訳で新人看護士さんはただ「ハーッ!」と感心しきりでしたが、この病院は別にSTのチームが回ってくれますので、総合力で助かっています。

そうは言っても、ちょっと目を離すと父を心配した母が、「アイスクリーム食べますか?
ヤクルト飲みますか?」となるので、それをダメというのでなく食事をきちんと取るにはチョコチョコ、「チョコとかヤクルトのませていると、ご飯食べなくなっちゃいますよ」ということを、世話したい側の気持ち損ねないように話すのも「技と気遣いがいります」

さりとて94だからもう好きなようにさせたらいいんじゃないの?という声も聞こえそうですが、どっこい片耳がほとんど聞こえない父にも、「気配はわかる」ということを念頭に置いて、「心無いことはしないようにしよう」と介助に通っています。人間は寿命迎えるまで人間であることを忘れないようにしたいと思います。

専門家の看護・介護・家族の看護と介護。見守り。
世話する側の「知と情の管理」
介護の現場は自分を問うことでもあります。
父を取り巻くすべての方から、学ぶことばかりの毎日です。有難いことです。

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