多くの人が、ある年齢にさしかかると、少なくとも10歳くらいは若く見えるようでありたいと願うようになり、髪を染め、しわを伸ばし、最新流行の服を身にまとい、少しでもその外見が若返るようにと、心を砕く。そうした努力の後、妙に軽快な足取りで近づいてきた日には、一瞬、どこぞの若者と思ってしまう。
ところが、それで何をするかと言えば、まず40年前の流行言葉でしゃべりだし、偏見と先入観いっぱいの頭は、石のようにカチカチで、芸術嗜好に至っては、ありきたりの月並で、話の引き合いに出てくるのは、とうの昔になくなっている俳優ばかり。現代の世の中には、まったくもって興味なし。外見には散々心を砕いても、内面はすでに死んでいる。40年前に、既に死んでしまったというわけだ。
残念ながら、たくさんの人々が、よく老いるということを、知らずにいる。60歳にもなって、若く見られたいなんて、ばかばかしにも程がある。若く見えなくても、建築家ル・コルビュジエのように、画家のティツィアーノのように、90歳になっても、活き活きとしていることはできるのに。
つまり、秘訣というのはね、どう若返るかということではなくて、いかに生き生きとし続けられるか、ということなんだ。
花吹雪の4月のある日に デザインの神様ムナーリの言葉より