うつわ

 「人のうつわ」なんて言葉を聞くと、ドキッとしますね。「あの人器小さいねえ」とか言われると他人事ながらちじこまってしまいます。うつわと言えば「器」食器です。普段使いの食器で食べているおなじご飯が、時に輪島のいい飯椀に盛られると、ご飯粒そのものが違って見え、美味しく見えます。日用品は丈夫が優先され、慣れてくると新しい使い初めの時の感動も薄れるものですが、輪島の漆塗りの飯椀などは使う度愛着もまし、作り手の気持ちがその掌に納まったカーブすら愛おしく感じられるようになって、つくづくいいお茶碗だなあと思ったりします。作家ものの陶器などは大事ですと、欠けても金継ぎまでして大切に使い、金継ぎの様子すら「いい景色」と愛でることもあります。ビールも同じで、お水飲むグラスで飲むのと、お店で電球のように薄いグラスで出されるのと、備前焼の焼きしめた陶器で飲むのでは、ビールそのものの味すら違うように思えたりします。

そう考えると、私達の着る洋服も「うつわ」かもしれませんね。まさに人を入れる器そのものが服でしょう。お料理と器の相性のように、TPOと言われるその時々にふさわしい色形があります。その器によって人の魅力を生かしたり損なったりもします。服を着るたびに、服をまとうたびに、「いい気分になれる」そんな服との出会いがその日をごキゲンにするような気がします。冬の間暖かい・ほっこりする色を選んで着ていた私達も、春の兆しを感じるようになると、いつしか新芽のような黄緑色・春の空のような薄いブルー・膨らみ始めた桜の色に似たピンクなど、つい手にしたくなります。「服は人のうつわ」であり服は気分であり、服は心持ちでもあるのですね。気候が亜熱帯に近づいてきた昨今ですが四季のある日本に生まれた幸せを謳歌して、様々な「うつわ」を楽しんでみましょう。その人が一番美しく見えるうつわが見つかるはずです。適当にとにかく間に合えばいいなんて思わず、私がステキに私らしく見える服。見直してみませんか?

 

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