漫画家のやなせたかしさんと言えば、アンパンマンの生みの親として有名です。そのアン
パンマンの中身のアンコは何か?と永六輔さんが聞かれ漉しアンが好きなので「漉しア
ン」と言ったら、やなせさんは絶対に粒アンだと譲らなかったそうです。「永さん、
それには理由があるんです。たくさんの粒がないといけない。たくさんの人がいて、
ひとつのことができるんです。漉しアンにしちゃうと一粒、一粒が残らないでしょ」
やなせさんに言われたそうです。だから、アンパンマンは粒アンでなければダメだと、
永さんもわかったそうです。アンパンマンはスーパーマンのように、超人的なヒーロー
ではありません。困っている人に食べ物を届ける。あるいは飢えた子どもに自分の顔を
ちぎって差し出す。それがアンパンマンです。戦中戦後の貧しい食料事情を体験した
やなせさんだから描けたものです。そのご本人も心臓にはペースメーカーを入れており
さすがに引退を考え準備を始めた時に、東日本大震災が起きて、「アンパンマンが助けに
来てくれる」「(震災後)アンパンマンを観て、子どもたちに笑顔が戻りました」そんな
声がやなせさんに寄せられ、すぐに被災地に出かけ、子ども達を励まし満身創痍の身で
仕事も続けられたようです。「正義って、普通の人が行うものなんです。偉い人や強い
人だけが行うものではない。普通の人が目の前で溺れている子どもを見て、思わず飛び込
んでしまうような行為をいうんです」これもやなせさんの言葉だそうです。だから、アン
パンマンは漉しアンではなく粒アンなんです。僕らはそれを忘れず、伝えていかなければ
いけませんねと、永六輔さんは締めくくっています。アンパンマンは粒アンです。