虚妄(こもう)

「AI vs 教科書が読めない子供達」発刊されたのは2018年ですが一年以上たってもロングセラーのようです。待合室にも置いてありますが結構読まれています。

数学者である著者の新井紀子さんは、AIの実力を確かめるためにAIに東大受験を課します。しかし数年の挑戦にも関わらず、偏差値は57に止まり、合格しなかった由。AIは暗記物や計算は大得意な反面、「意味」や「曖昧さ」が処理できないという致命的な欠点があり、それらを必要とする英語や国語の読解では得点が出来なかったようです。

そんな欠点があるAIが、なぜ偏差値57も取れてしまうのかと調査の結果、現在の受験生(のみならず日本社会全体)の「読解力の低下」にあるとの結論に至ったそうです。昨今散見されるネット上の論争も、読解力のなさからそうなってしまうと見受けられるというのが新井紀子さんの見解です。

この読解力ということに関しては、先日他の番組で、AIにはできない読み解く力の欠如が言われていて、読み解く力=単に「読むのではない!」と強調して言っていました。なんかモワ~ッとわかるのではなく(雰囲気で何となく読むのでなく)読み解く力をつけて欲しいと今のお子さんや若い方にメッセージでした。

読解力の低下の問題というより、姿勢の問題という見方もあるようです。未知の対象に虚心に向き合わず、何らかの前提をもって、あるいは先入観に引きずられて対したときに、相手の姿は必ず歪む、それを仏教で「虚妄」というそうです。

「虚妄」は丁寧の対極にあり、自分の勝手と都合が作り出すものだそうです。雑に自分勝手な読解で、見える世界を歪めながら生きていないか、振り返ってもいいかもしれません。でないとその座はAIにたやすく奪われてしまいそうです。