大学卒業後、ご縁あって就職した職場。
ある大学病院の医局でした。その医局は名だたる先生方が沢山お出でになりましたが、
教授でらっしゃる中島章先生は、本当にすごい先生でらっしゃいました。数々の国際学会をリードされ、アイバンクやタイ国とのお繋がりなど、日々の臨床のみならず、大きな足跡を遺されました。
いつもいつもご本を離さず勉強なさるお姿や、あたたかいお人柄に誰もが魅せられ、だれもが尊敬申し上げていたと思います。
その中島先生が2016年逝去され、この度「中島章先生追悼文集」が刊行され、有難くも私も頂戴しました。懐かしい先生方・ORTの方がそれぞれの中島先生への想いをつづられる中に、ふと足をとめる文章がありましたので、ご紹介したいと思います。
1987年「同窓会誌第六号」「教授あいさつ」の一部だそうです。
「患者さんの信頼は皆の血のにじむような努力を積み重ねて創られていくもので、そこに働く一人ひとりの活力と創意工夫と努力の結果である。人間の能力に大きな差があるわけではない。毎日の生活に対する心構え、小さな気配り、努力、そして仕事に対する誇り、仕事を完全にし遂げた時の満足感と言ったことが、皆のチームワークの基礎にあって、全体としてよい仕事が出来る。そこに生き甲斐も楽しみも生まれる」というものです。
この文章に感銘を受け常日頃心がけていると仰る医局員の先生が引用をもって偲んでらっしゃいました。
そしてつい最近、作家の柳田国男氏が語っておられる「死後生」という概念「人は死んでも人間性・精神性は残された人の心の中で生き続ける」ということを知り、中島章先生がその医局員である先生の心の中に生き続けておられることを実感していると綴っています。
頂いた追悼文集の中で、この言葉があらためて、今の私の心にしみわたり、深く深く感謝申し上げるとともに、中島章先生のなんともほんわかしたニコッと笑う笑顔を思い出させて頂きました。
文集の裏表紙は、教授愛用のリュックとシューズ。ずいぶん昔から背広にこのリュックを背負ってお通いでしたし、国際学会でも同じでした。懐かしく思い出しながら、この言葉かみ締めさせていただく機会となりました。